Manufacturing
Strategy-map

事業目的

日本の製造業の競争力を支える中核技術であるものづくり技術について、今後必要となる技術課題とその出現時期を明らかにし、またそうした技術を実現するための方策を提案する「ものづくり技術戦略マップ」を策定しています。

活動概要

自動車、情報家電、ロボットなど日本経済の中核産業である製造業は国際的には激しい競争にさらされ、また地球環境問題や少子高齢化問題などの課題に対応していくことが迫られています。こうした製造業の競争力を支える中核技術がものづくり技術です。

MSTCでは、10~15年後の製造業にとって競争力を確保しつつ諸問題に対応するために必要なものづくりに関する技術課題とその出現時期を明らかにし、またそうした技術を実現するための方策を提案するため、平成18年度から「ものづくり技術戦略マップ」の策定を行っています。

ものづくり技術戦略ロードマップは、ものづくり立国を標榜するわが国が世界的な技術開発競争の中で勝ち残り輸出競争力を維持し続けるため、新しいコンセプトを創生し、独創的な技術開発を行い、製品化をするためのガイドラインとして、平成18~20年度の3ヶ年で策定し、平成21年度は、専門家及び企業の若手技術者によるレビューを行いました。平成22年度は、新たな戦略確立のためのアクティブな将来シナリオの検討を行い、構想設計及びサステナブル・マニュファクチャリング分野におけるテーマの研究発掘を行いました。

この成果は、経済産業省監修の技術戦略マップ(設計・製造・加工分野)に反映されています。

活動実績

平成22年度概要

平成22年度は、新たな戦略確立のためのアクティブな将来シナリオの検討を行い、構想設計及びサステナブル・マニュファクチャリング(環境)分野におけるテーマの研究発掘を行いました。

現在から将来にわたって世界的に激化する市場社会の中で生き残り、技術革新の最先端を見極めて製品製造に活かすためには、中長期的な戦略が必要です。日本が優先的に取り組まなければいけない技術のシナリオを作成するとともに、日本のものづくりのおかれた現状認識や自らが抱える課題を明確にし、各産業の壁を越えた議論を行うことで、今後、日本のものづくりのあるべき姿や戦略の事例の作成を行いました。

また低炭素社会(サステナブル・マニュファクチャリング)の実現に向けた技術及び大型構造物等の構想設計技術に関し調査を行い、課題解決策や戦略について検討を行いました。

なお9月29日に名古屋大学で シンポジウム を開催し、幅広い技術交流を行いました。

平成21年度概要

平成21年度は、専門家によるロードマップのレビューと産業界によるロードマップの評価を行いました。当該分野の専門家によるロードマップのレビューでは、掲載項目に過不足が無いかどうか、修正すべき項目が無いかどうかについてレビューを受けました。産業界によるロードマップの評価では、17項目の重要技術課題について、アンケート方式での評価を行い、その結果に基づいて重要度の順位付けをし、最重要課題を抽出しました。

また成果報告会を行い、公開質疑やアンケートにより参加者からの意見や情報を入手し、技術戦略マップのローリング資料としました。

ローリングでは、1)生産システム、2)加工、3)設計、4)サステナブル(環境)の各ロードマップを見直すとともに、次のワーキンググループを組織して検討を行いました。

(1)ものづくり構想設計WG
日本の製造業は、さらなる低コスト化、高品質化はもちろんのこと、製品の付加価値向上が重要であり、構想設計から生産設計までを一貫する次世代の製品開発システムを実現するための「設計システム」について検討をしました。
(2)サステナブル・マニュファクチャリング技術マップWG
新たに設定された90年比CO2排出量25%減を満足するためのシナリオを中心に、将来の日本のものづくりのあるべき姿から解決すべき技術項目の優先性を明らかにし、現状の技術を求める技術レベルまで育成発展させるための方法や新たな技術融合領域の実現への取り組みについて体系的な見直しをしました。

平成20年度概要

平成20年度は、日本の企業等が目指すべき戦略的な方向性、またそれらを支える基礎技術や融合化技術を明確にし、ものづくり技術戦略ロードマップをベースに日本のオリジナル技術・得意技術を有効に伸ばすための戦略的な技術開発項目の抽出を行い、日本の企業が国際競争力を得るための戦略的技術開発に関する提言をしました。

ロードマップ作成作業では、サステナブル・マニュファクチャリング、生産システム、設計システムというシステム的視点から全体を眺めることで、対象技術の極端な詳細化・細分化を避ける一方、加工技術については先端技術と従来技術とをすべて検討することで利用価値の高いマップにすることを目指しました。

(1)ものづくり生産システム分野
今後の技術マップを考えるためのカテゴリーとして、「産業基盤の整備」「既存産業の高度化」「ニュービジネスの創出」を大分類事項におき、それぞれに関して10年後、20年後の技術マップを展開するとともに、時間軸を設定してロードマップを作成しました。
(2)ものづくり設計分野
製品開発の工程を「構想設計」「詳細設計」「生産設計」の3つに分けて分析しました。日本の製造業が世界で強さを維持するためには、構想設計と生産設計に係わる技術課題を解決することが必要であると結論づけました。
(3)ものづくり加工分野
わが国の加工技術を総合的に俯瞰し、横断的及び縦割的な視点で15の技術項目を選定し、ロードマップを作成しました。日本の競争力の源の一つである加工技術の強化のためには、ロードマップで示された課題に速やかに取り組む必要があると結論づけました。
(4)ものづくりサステナブルマニュファクチャリング分野
サステナブルな社会の実現というニーズからスタートするトップダウンのマップ作りを試みました。2025年の社会のあるべき姿についてのおおまかなシナリオ作成を先行させ、シナリオの実現のために必要な技術を大分類から徐々に抽出しました。
(5)研究開発課題の提案
「ものづくり研究開発課題」として、1)サステナブル・マニュファクチュアリングの浸透、2)超短期間超少量生産可能化体系の推進、3)環境負荷超少化技術の開発、4)高精度頑健機能創製技術、5)人間・ロボット協調生産システム、の5項目を構築しました。

平成19年度概要

平成19年度のロードマップの内容は、平成18年度の結果を全面的に見直すとともに、製造業の競争力強化を目的とした技術開発の「重点化の評価」を加えました。サステナブルマニュファクチャリング関連技術についても各ロードマップの「重点化の評価」欄にその旨をあわせて明示しました。

またロードマップの名称を「製造技術ロードマップ」から「ものづくり技術戦略マップ」に変更しました。

委員会構成も変更し、「ものづくり技術戦略ロードマップ検討委員会」の下に「生産システムWG」「設計WG」に加えて、次の2つのWGを組織しました。

・加工技術SWG:ものづくりにおける大きな柱の一つである加工技術について調査する
・製造技術体系化市場・統計WG:日本の製造業の強みを分析する

生産システム、設計技術、加工技術の重点課題は次の通りです。

(1)生産システム
生産システムは、改良改善によって進歩していく技術と飛躍的な転換の図られる技術に大別できます。またシステムが健全に発展するには、産業基盤が充実することが重要な課題となります。生産システムのシナリオとしては、「産業基盤の整備」「既存産業の高度化」「ニュービジネスの創出」を主要分類として抽出し、改良改善によって進歩していく仕組み・技術と飛躍的な転換の図られる仕組み・技術を交えて、技術マップを展開するとともに、10年後、20年後の時間軸を設定してロードマップを作成しました。
(2)設計技術
日本の製造業が勝ち残っていくためには、必要な製品開発ツールを実際に開発することが重要です。焦点をある程度絞らなければ、開発するツールの具体像が見出せません。
そこで本年は、問題点をもう一度見直し、問題点を解決できる可能性のある技術をピックアップし、絞込みを行い、CAD、CAM、CAE技術に焦点を当て、製品開発の全体像を俯瞰するために、冒頭に管理や技術活動支援技術を付けることとしました。また「設計・技術管理支援機能」「設計・生産技術活動支援技術」「モデリング技術」「現物融合技術」「ナレッジ管理運用技術」「CAE、シミュレーション技術」「基盤情報技術」を主要分類として抽出しました。
(3)加工技術
革新的なものづくりに対応して、全く新しい概念の加工技術が必要とされる場合と、継続的・連続的な技術革新が要求される場合があり、本ロードマップでは両者を総合して戦略的に俯瞰しました。新しい概念の加工技術として「NFFマシニングシステム」「材料・エネルギー最小化加工技術」を、継続的・連続的な技術革新が要求される技術として「機械加工(多軸工作機械、切削加工、研削加工)」を抽出しました。またロードマップに加えて、各加工法において、微細化や加工精度の指標となる加工単位と加工能率との関係をマップ化して示しました。

平成18年度概要

わが国製造業の今後の競争力を確保するために必要な技術課題を明らかにし新技術の導入シナリオを示すための基礎調査として、「設計」及び「生産技術」を含むものづくり技術を体系化し、それら技術の導入、実用化時期を予測した製造技術ロードマップを作成しました。

(1)ヒアリング調査の実施
ヒアリング調査は、製造技術ロードマップの作成に当たっての基礎資料を得ることを目的として、製造科学技術センターのメンバー企業を中心に製造業の主要企業34社を対象に実施しました。
質問内容は、「設計技術」「トータルな生産システム」「セル生産システム」「品質管理技術」「ロボット」「加工技術」「環境関連技術」「ノウハウのデジタル化」について、それらの技術の導入時期や今後の導入予定を伺い、貴重な意見が得られました。
(2)委員会
「次世代社会構造対応型製造技術の体系化調査委員会」「生産システムWG」「設計WG」の1委員会、2 WGの体制としました。
生産システムWGでは、製造技術を「生産プロセス技術」「生産管理・情報技術」「環境を考慮したサステナブルマニュファクチャリング」「社会を考慮したサステナブルマニュファクチャリング技術」の4分野に分類し、分野ごとの主要な「要素技術」とその「実現予想時期」をプロットしました。
設計WGでは、「ビジネススピードの向上」「製品付加価値の向上」「グローバル化への対応」の3分野に分類し、「設計品質の向上」「CAD」「知識」「設計と生産間のコラボレーション」「データ品質管理」等の項目を挙げ、それらに関する技術項目の実現予想時期をプロットしました。